サムライ待望

もう何年前のことになるだろうか、ざっと数えて15年も前のこと、高槻市役所にひとりのいわゆるサムライがいました。仮にM氏としておきましょう。そのときM氏は高槻市文化振興事業団の事務局長のポストにあって、高槻現代劇場の運営について責任を負っていました。ま~爺と個人的にはそれほど深い交わりがあったわけではありません。

北インドのミティーラ地方にあって、女性のみに伝わる民俗画があります。ま~爺たちはその作品を招聘して展示する展覧会を企画しました。会場は高槻現代劇場展示ルーム、会期は21日間と決め、会場の使用申請を行いました。ところが高槻市の条例は展示ルームを1週間以上にわたって連続使用することは認められないと定めているのです。

ま~爺はM氏に掛け合いました。M氏は21日間の連続使用を許可してくれました。明らかな条例違反です。ま~爺はM氏の立場を慮って「大丈夫ですか?」と尋ねました。そのときのM氏の一言はいまだに覚えています。「高槻のまちのためにいいことなら、それでいいんだ。責任は私が取る。そのために辞表はいつもふところに入れている」

高槻現代劇場で21日間にわたって開催したミティーラ民俗画展は大きな評判を呼び、新聞やテレビなどのメディアにものって、近畿一円から大勢の来場者を迎えることができました。21日間にわたる長期の催しを開催すること自体、高槻市はじまって以来初めての出来事ごとでしたが、このことはひとえにM氏の勇敢な決断のたまものでした。

何でも規則だの立場だのと、高槻のまちのためになるということが分かっていても、何も決断しようとしない、そんな役人ばかりになってしまったとは思いたくはありません。しかし、そう思わざるを得ない事態に出くわすことが多すぎます。高槻のまちのために大所高所から決断する、責任は自分で取る、そんなM氏のようなサムライを待望するばかりです。

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