映画「殯の森」を見て

このことは書こうか書くまいか、随分と躊躇しながらも、やっぱり書いてしまいそう。映画「殯の森」を見たま~爺の感想。監督は若い女性の河瀬直美で、今年のカンヌ国際映画祭でグランプリン受賞したということもあって、評判を呼んでいます。

ま~爺も期待感を一杯にして、先週の土曜日に、大阪・九条のシネ・ヌーヴォまで見に行ってきました。ひとくちにはっきり言って、がっかり。裏切られた思いでした。ま~爺レベルの感性をもってしては、とてもじゃないがついていけない映画でした。

何よりも33年前に、まだ健常な壮年であったはずの主人公が、妻をなぜ人も通わないような山中に埋葬したのか、そのことの説明がないままでは成り立たない筋立てです。交通事故で子どもを亡くして、離婚もしたらしい女性主人公の境遇についてはおおまかにも説明されているのに、テーマの核心部分について説明が省略されているのはなぜでしょう。

そのために、痴呆老人のわがままな行動に振り回される思慮足らずの若い女性主人公――映画からはそんなイメージしか結ぶことが出来ませんでした。ラストシーンの女性主人公のいかにも意味ありげな喜びの表情はなんだったんでしょう。「殯」の意味については、「敬う人の死を惜しみ、忍ぶ時間のこと、またその場所のこと」と、ラストシーンのあとの字幕で説明されてはいたけれど、これではせっかくのタイトルそのものが映画の失敗の言い訳のようにも響きます。

たしかに、俯瞰で撮った風にそよぐ森や茶畑の幾何学模様の美しさには映像美の極致を見る思いに誘われました。しかし、ま~爺などは映像美を求めて映画を見るということはありません。映画はやはり映画でなければならないでしょう。

映画を評判だけで見に行くのはいけませんが、しかし、見てみないことにはいい思いは得られないわけですし、とにかく見てみることですね。

そういったわけで、日曜日にシネ・リーブル梅田まで行って見た「サイドカーに犬」は土曜日の口直し。監督の根岸吉太郎はさすがですね。もうベテランの域に達している監督の手際をタップリと見せていただきました。竹内結子、それに子役も含めて役者たちの演技も良かった。原作者の長嶋有はま~爺の数少ない若手の愛読作家。何年か前に「猛スピードで母は」で芥川賞を受賞、最近では大江健三郎賞の最初の受賞者となりました。原作に魅かれて見に行った映画ですが、原作を越えた満足感を得ることが出来ました。

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